君色キャンバス
描く未来
一之瀬君が「ちょっと用意してくるから待ってて」と言ってリビングから離れて早5分が経過してる。
1人っきりになったら、何だか妙にソワソワして落ち着かない。
1分、1秒が気になってしまう。
本当なら今の時間、いつもなら自分の部屋で詞でも書いてるはず。
それなのに今日は一之瀬君の家でお泊り、だなんて。
あまりにも非日常すぎて考えたら恥ずかしい。
「中野、ごめん。ちょっと思ってたよりもイーゼル持って運ぶのに時間がかかってさ」
「……え?」
一之瀬君はイーゼルを置き、真っ白のキャンバスをそこに立てた。
「もしかして……、今から絵を描くの?」
「ああ」
「何を描く気?」
軽い口調で言ったのに、一之瀬君は真剣な目で私を見た。
少しの沈黙が走り、急に妙な緊張感が私を襲う。
「――中野を描きたいんだ」
「……わっ、私――?!」
* * *