君色キャンバス


 言葉が途切れた。

 中野の言葉は俺の核心を貫いたから。

 どうしようもない俺のボロボロな心の奥には、確かに俺の父親がまだ生きている。


 中野と一緒にいることで俺はあの日を忘れたかのようにいたけれど、本当はあのときの惨劇を思い出したら、絵に向かうことが怖いんだ。


「中野、お前はちゃんと俺を守れてるよ」

「……え?」


 “過去”は脆いけど、中野と一緒にいる“未来”はとてつもなく俺の心を満たして、限りなく広がる目に映る光景は中野が見せてくれたもの。


「中野には好きって気持ち以上に、言い尽くせない感情があるんだ」

「……言い尽くせない感情?」


「俺はさ、やっぱり中野ほど言葉が巧くないから、やっぱり今の気持ち全て表したお前の姿を絵に描きたいんだ。
 
 その絵が描き終えたら俺、中野に伝えたい気持ち……言葉に出来るかも知れない」


 中野は黙ったまま下を向く。

 何かを考えているかのように思えた。


 
 きっと俺らの今いる地点は、不確かで脆くて壊れてしまいそうなんだ。

 だけど一緒にいたいと思ってる。


「……いいよ」

「え……」

「私を……描いて――?」

 

 * * *




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