君色キャンバス
――
――――
「…………の」
――誰?
誰かが私を呼んでる。
それだけは分かってるのに、私はその声がどこから聞こえてるのかわからずきょろきょろと辺りを見回した。
そうしたら見えた人影。
人影が見えた方向に向きなおすと、その人が私に手を差し出した。
私は一切躊躇うことなく、その人の手をとる。
顔が誰だか分からないのに、安心する手。
この人、知ってる……。
「中野!!」
ばっとその声で目が覚めた。
なんだ、今のは夢?
「大丈夫か? なんか……うなされてた」
「あ……あああっと」
一之瀬君の顔を見た。
やっぱり、あの手を差し出してくれた夢の人は……一之瀬君だ。
「私……離れたくない……っ!」
あの時、言いたくても言えなかった言葉。
それが今更になって溢れ出して来る。