君色キャンバス
きっと君には
大切なものに、数の制限はなかった。
初めから目に見えるものだけが価値のあるものだと勝手に決め付けてきた俺に、ここに行き着くまでにはかなりの時間が必要だった。
今思うと。
俺はきっと“過去”という殻に閉じ篭っていて、ないものねだりを繰り返し、ただガキなだけだった。
行き着いた果ては“孤独”と“後悔”と言いようのない虚無感。
ダラダラ過ぎていく日常なくせして切羽詰ったかのような素振りを演じるこの時代に、呼吸を繰り返すことさえ嫌で嫌で耐え難かった。
「俺はきっと、俺って言う人物を価値のない、ゴミなんだと実感してきていたんだ」
一つ、口に発すると鮮明にあの日々を思い出す。
両親を一気に失ったあの日から、中野に出会う前までの日々を。
ろくなもんじゃなかった。
誰も助けてくれなかった。
あるのは、父の遺物から生まれた、もう一つの惨劇。