君色キャンバス
後ろから抱きしめられる腕。
その腕から優しさを感じる。
私の肩に顔をうずめると、何だか妙に切なくなってくる。
――さよならが、近づいてる――
泣いちゃ、いけない。
私が泣いてしまうと一之瀬君はきっと私の側にいてしまう。
それじゃ、ダメ。
この胸に残る優しさを、くれたのは一之瀬君なんだから。
私はこの温もりを信じて明日さえも巻き込んで生きていく。
「私、一之瀬君に一つだけわがまま言っていい?」
「……え?」
「もう一度一緒に高校に行きたいな」
最後の、わがまま。
1日だけ、あなたと共に過ごしたスクールライフをしたいの。