君色キャンバス
1日だけの
私と一之瀬君が校門を過ぎると真っ先に聞こえたのはグラウンドからの部活動生の声。
今はちょうど放課後。
茜色の空の下、運動部に所属する部活動生は汗や泥で汚れていることさえ気にせず、無我夢中で取り組む姿が眩しい。
「……なんか、夢みてるみたいだ」
「ほんとだね。私なんて一之瀬君よりもずーーっと学校生活してるのに、なんだか……映画のワンシーンでも見てるみたい」
自分でも分からない感覚に包まれる。
懐かしいような、寂しいような。
ずっと前からこの場所に居たのに。
こんな感覚に包まれるなんて、思いもしなかった。
きっとそれは一之瀬君がいるからだ。
グラウンドを一通り見終えたら、今度は空き教室に入る。
7間目の補習が終わった後なのか、数学の内容が黒板に書かれたまま、消されてなかった。
一之瀬君は黒板の内容を真剣に読むと、急に白いチョークを手に取る。
そこからカツカツと軽快にチョークを走らせると、ものの数分で解いていない問題を解き終える。
「これ、答えあったらいいのにな」
私が見る限り、一之瀬君の解いた問題はあっていそう。
第一、この問題……「有名大学問題」って先生が赤チョークで、でかでかと書いてる問題なんだけど……?
「一之瀬君って……今まで学年何位だったの?」
「……え? 一桁だけど」
ひっ……ひとけた!!
びっくり。
一之瀬君って頭、良かったんだ。
知らなかったよ、そんなこと。
「中野は何位だったの?」
ニヤッと悪戯っぽく笑う。
その笑みからして、私の順位なんか分かってるくせに。