君色キャンバス
 
 ああ、あの眼だ――……。

 
 蘇る過去の記憶に、幾度なく残るあの眼。

 俺に向けられる視線はいつだってあの眼だった。


 父親の最後に遺した最期の絵、“迷月”――


 その絵は呪われた絵で、見た人の者を死へと追い詰める力があり、父の死後に行われた個展で人々を死をもたらした。


 そしてその罪の矛先は俺に向かれて、もう二度と絵を描くことを奪われた。


 ……はずだった。

 
 でも、俺は失えなかった。
 
 いや、失うことさえ出来なかった。


 いつだって俺の手は絵を求めていて、押さえようとする度に何度も何度も絵を描きたい衝動に駆られてしまう。


 例え、俺が絵を描くことで傷つく人がいようとも。


「お前はっ! お前がっ……、絵を描くことで、どれだけの人が傷ついてると思ってんだ?!

 今までだって俺は中野の中にいる一之瀬を信じようと努力した!!


 けどな、お前はいつだって意図も容易く粉々に壊す。

 お前の血には一之瀬省吾の血が流れてんだっ!!」


 俺は北村の眼をあえて見ようとはせずに、自分の手を見た。
 
 相変わらず、自分の手は絵を求めてる。


「……っ」


 逃れられない運命。

 託された呪い。


「俺はもう、絵を失えないんだ」

 
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