君色キャンバス
 
 北村の表情が歪んだ。

 俺の一言で何かが変わったように見えた。

 
 急に北村はさっきまでの鋭い眼をゆるませて、

「……お前の父親がなんであんな風になったか、俺は知ってる」


 眼光が見開いた。

 心臓が一気にドクドクと加速する。


 榊原さんでさえ、俺に教えてくれなかったこと。

 なんで北村が知ってるんだ?!


 
「――教えてやるよ、……俺のことも、な」



 * * *


 1分間目を閉じていた。

 目を開けたら一之瀬君は居なくて、さっきまで解いた一之瀬君の問題が残されてるだけ。

 その文字にすっと触れると、脚の力が抜け、床にずるずると滑り落ちた。


 一之瀬君らしい、終わらせ方だね……。


 さよならもばいばいも言わない。

 そんな不安定な言葉を贈るより、自分が消えることで終わらせた。


「――――……っ」



 
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