君色キャンバス
最終章
運命の歯車
俺はゆっくりと“榊原”と書かれた家の標札を見、勢い任せに門を開ける。
再びその場所の地面に足をつけると、また籠の中の鳥になる。
北村から知った真実。
あまりにも脆かった。
榊原さんが教えなかったのは、きっとまた真実は俺を裏切るから教えなかったんだと頭で理解した。
「ははっ、はははははっ、結局みんな裏切り者でしかなかったってことかよ」
俺は自分は黒く染まったと思っていたけど、まだどこかで染められていない部分があった。
それさえももう今では黒になってしまった。
そしてあのとき以上に広がる闇は、俺の立ち位置さえも奪う。
もう信じるのが、嫌になった。
このまま裏切られて、裏切られて、そして誰かを俺もいつかは裏切ってしまう。
誰かの幸せを。