君色キャンバス
 もしも……、

 もしも。



 本当に願いが叶うなら、父親に会いたかった。

 そして聞きたいことがあった。

 
 “俺を生かしたのは、どうしてか”って。

 

 俺なりに答えを仮定してみたけれど、その仮定はどうしても自分にとって都合のいいとしかいえない答えが出来上がったんだ。


 俺を生かしてくれたのは、父親の最後の優しさだったんじゃないかって答え。


 北村から語られた真実は、その俺の仮定に沿っているような気がした。

 
 だから……俺はもうここには進まない。


「榊原さん」

「……なんだ?」


「俺はここを出ます! 

 今までここに居たのは父親の過去を知りたかったから。

 その必要がなくなった今、俺はここに居る理由はなくなりました。

 
 これからは自分の力で這い上がって、自分の道を自分の足で踏みしめて行こうと思います」


「…………」

 
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