君色キャンバス
 いくら北村君だって、言っていいことと悪いことがある。

 北村君は私の目を見ると急に自分の顔を手で覆うと、床に座り込んだ。


「……んだな」

「え…………?」


「奈津まで俺のこと、突き放すんだな……」


 体が、震えてる。


「俺は……、俺が……ここに存在しなかったら、一之瀬のことを恨まずにすんだんだろうな」


 北村君の顔を覆う手がゆっくりと離れると、目からは涙があふれてる。


 なんで……?


 北村君が泣く理由が私には分からない。

 何に泣いてるのかさえ。



「分かった、もういい。
 俺はもう奈津の近くにはいない。

 これ以上お前らの壁になるようなこと、しないから」


 
――……ダメ……!


 私の本能がこのまま北村君を行かせてはいけないって叫んでる。

 こんな状態の北村君を独りにさせたらダメだって。


 私に背中を向け、教室の扉を開けた。

 その瞬間、私は北村君の手を掴む。


「……待って!! 行かない、で……」

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