君色キャンバス
 俺は中野から目が離せなかった。

 見つめる視線はあまりにも弱々しく、それでも逸らそうとしない目は、一点の曇りもない。

 澄んだ世界。

「……中野はさ、俺とは違うものを持ってるんだよ」

「だからそれ、意味分からないって」

「分かってしまえば灰色。分からなければ、透明。だから知ろうとするな」

 何でだろう。

 言ってる自分の言葉が、まるで自分の言葉じゃないみたいだった。

 手に持つスケッチブックが震えた。


「じゃあな」

 俺はそう言って屋上の扉を開き、そのまま扉の前でずるずると崩れ落ちた。


「教えれるかよ……」


 君には言えない。
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