君色キャンバス
「奈津……」

 ぎゅっと目を瞑る。

 今は北村君の顔が見れない。

 
 傷つけてしまったから。


「目、開けて」


 優しい、声。

 私は恐る恐る目を開けると、北村君は微笑って、私を見ていた。

 そして額にキスをする。


 ばっとその触れられた額を手で覆う。


「俺は奈津のこと、親友だって思えない」

「あ……」

 やっぱり、そうだよね。

 私、自分勝手すぎた。





「奈津は俺の……“初恋の人”だから」


 えっ……?


 微笑む北村君の顔があまりにもまっすぐに届くから、目が放せない。



「奈津……、一之瀬は“過去”を知ったよ。全部」

「嘘……」

 ドクッと心臓が震える。

 一之瀬君は過去をいつだって背負って生きてきたはず。

 全部知るってことは……、この先……――どうなるの。



「俺が、教えたんだ。

 あいつに過去を。

 一番あいつを傷つけることを知っていたからな」


 それ、って。

 今、一之瀬君は……!


「奈津も……知りたい?

 でも知ったらきっと奈津は今までどおり、一之瀬を信じれなくなるかもしれない。

 その勇気があるのなら、教えてやってもいい。



――“親友”として」


 
< 181 / 210 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop