君色キャンバス

 そう言うと一之瀬君は震える手で私を抱き寄せると、そのまま“私”を確かめるかのように強く強く抱きしめた。


「いいのか?」

「何を?」

「俺はこの先中野を裏切るかもしれない。幸せになんか出来ない……」


 私ね、私は……

 これからもねきっと……


「一之瀬君の傍に入れることだけでそれがもう私の幸せなんだよ……」



 そう、小さく言う。

 けれど力強くはっきりと。



「俺の幸せも中野が傍にいることだ……」


 顔が自然にほころぶ。


「じゃあ私たち……一緒だね……」

「そうだな……」


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