君色キャンバス
その声にはっとするとそこにいたのは他の誰でもない北村君だ。
こつんと卒業証書の入った筒を私にぶつけ、舌を出す。
「な、なにすんの?!」
「べっつにー、俺シケた雰囲気嫌いだからお前の泣き顔とか見たくねーの」
「はいはい不細工ですよー」
「そんなことは言ってないだろっ」
相変わらずの会話を繰り返していると、
――――ある人影がみえた。
「ほらっ行ってこいよ」
その人影に視線を落とし、そして前を向く。
「中野」
そう優しく呼ぶ方へ私は駆ける。
迷いなんかない。
「一之瀬君っ」
愛しいあなた。