君色キャンバス
ただ単純に、一之瀬君が好き。
その気持ちが涙に変わる。
頬を伝う涙は、温もりで溢れ返っていた。
そしてお互い放れると、目が合う。
「俺の過去と、俺の絵を見て欲しい。中野に」
「うん」
一緒に歩幅をあわせて歩く。
そこからは何も喋らない。無言が続く。
だけどこの無言がまた幸せになれる。
なんでかな、凄く暖かい――。
一之瀬君の家が見えた。
そういえば、一之瀬君が学校休んてプリントを届けに、家に行こうとした時、滅茶苦茶迷ったな。
担任のシバセン(柴田先生)が描いた地図のテキトーさがいけなかったんだと思うけど。
それにしてもあの地図、下手糞通り越した気がする。
思わずふっと笑いが込み上げる。
「何笑ってるんだよ」
「別に!」
「何それ、気になるんですけど」
「秘密ー!」
「はいはい」
呆れ顔の一之瀬君。
またそれがニヤける。
「なんかすっげぇ気になるんですけど」
「聞かないで」
笑いが毀れて毀れてどうしようもない。
ニヤけすぎかも。