君色キャンバス
 
 “優しい詩”


 拙い言葉が繋ぐ想いをしっかりと受け止めてくれる人が居る。
 
 そして残してくれる。

 私が私自身の想いをしっかりと知ってくれる。


「中野」

 そう呼ばれて振り返る。

 ああ私は――なんて幸せ者なんだろう。

 
 たった1人でも私の詩を理解してくれる人が居て、そして側に居る。


「お前が俺の側に居るって言ってくれて、それだけで救われた。
 俺が再び絵を描きたいと思わせてくれたのは中野がいたからだよ」

「そんな事っ! 私はただ一之瀬君を想っていたい」

「ありがと、な」

 そう言って私にキャンバスを差し出す。

「やる。この絵は中野のだから」

「えっ……」

「いいから、貰っとけ」

 そう言って差し渡された絵。

 その絵をまたじっと見つめ、私はやっぱり一之瀬君に差し戻した。

「この絵は一之瀬君のだよ。だからさ、この絵を見たい時に見せてくれたらそれでいいよ。
 その気持ちだけで私は嬉しいから」


 そう言ったら一之瀬君は何も言わずに受け取る。

 
 * * *


 変わり行くもの。

 変わらないもの。

 
 今日あって、明日はないもの。

 その全てが私にとっては譲れない。

 明日がほら、始まるでしょう?


 夢に全てを伝えて。
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