君色キャンバス
第3章
それぞれの想い方
普通科と商業科を繋ぐ渡り廊下がある。
その渡り廊下を越えた、すぐ先にある商業科の方の文芸部の部室からは、丁度普通科にある美術室が対称の場所に位置しているのでばっちり見える。
はっきり部室から見える美術室が気になって、気になって仕方がない。
少しストーカーっぽいけれど、やっぱり一之瀬君が見れると思うと顔がニヤける。
はたからみたら、単なる変態だ。
最近一之瀬君はキャンバスに絵を描いているみたい。
凄い真剣な顔。
熱気がこっちまで直に伝わってくる。
そういえば私、一之瀬君がこうやって絵を描いている姿を見るのは初めてだ。
と言っても覗いてるようなものだけど……。
それに横に見える……え~っと、あの先生誰だっけ。
んーーと、イマイチ名前が出てこない。
とりあえず先生Aにでもしておこう。
先生Aも凄い恐い顔で一之瀬君の絵を見てる。
なんか2人揃えば凄いオーラが発せられてるような。
……と。
私も一々こんな所で覗いている場合じゃなかった。
今日は新聞部に呼ばれてるんだった。
あの件の打ち合わせが始まる。
私の詩が、みんなの目にどう映るんだろう。
一之瀬君は私の詩を理解してくれるけれど、やっぱりそういう人ばかりじゃないって事も知ってる。
何しろ中学生の時、私はあるクラスメイトの男子から詩をみんなの前で読まれて、馬鹿にされた記憶がある。
そんな男子の顔は今ではもう思い出せない程だけれど、やっぱりああいう事もあるから簡単に私の詩を受け入れて貰えると思うのはダメだ。
初心を忘れずに。