君色キャンバス
俺の父の絵の最期の絵は多くの犠牲者を出してしまった。
気持ちが悪くなるくらいのリアルの死を描いた絵。
父が見せた絶望は人々に死を与えてしまった。
呪われた絵を描き遺して逝ってしまった父は、あまりにも罪深い。
あの絵はもう今はどっかの企業の社長が買い取り、俺はその報酬で結構な額のお金をもらい、一生をしのげるくらいのお金を手にした。
あの絵のおかげで、俺は生きていけてると思うと無性に黒い感情に身が染まっていく気がした。
俺が再び絵を描く事は今までの多くの犠牲者の家族の想いを、一気に壊してしまう。
あんな殺気染みた俺を見て、発狂する姿が俺の遠い記憶にあって。
どうすればいい? 教えてくれよ。
屋上の風が髪を揺らす。
こんな時でも俺の手は絵を求めている。
馬鹿だ、ほんと。
この手が絵を求める限り、俺は父のしがらみを持ち続けている。
苦しんで、苦しんで、そして底辺でもがき続けたとき、中野の笑顔が心に残った。
たた一度でも想える人が出来た俺は、きっと幸せなんだろう。
かつての父が母に向けた愛もこんな優しかったんだろうか。
その問いはもう、聞けないけれど。
幸せか、不幸か。