君色キャンバス
その選択の答えを俺はずっと探していた。
薄汚れた世界を行き来し、この身さえも染まりかけた。
でも……――――
俺はやっと、胸を張って“幸せ”だと思えたから。
迷いたくない。
やっと分かったんだ、俺が本当にしたいことが。
俺はもう躊躇わず、絵を描く。
俺に向けられる視線はきっと変わらない。
また再び父の絵の犠牲者となってしまった人達にあの眼で見られることになるだろう。
それでも俺の手は、描きたい絵が溢れてるんだ。
どんなに止められようと、俺の手は最初から決まってた。
――『好きだから! 大好きだから、詞が』
そう言った君の笑顔は未だに俺の脳裏に焼きついて、離れない。
本当に好きなものは本当に変えることの出来ない、自分だけの領域がある事を、俺はあの時知った。
だからあの時の笑顔が心の奥に響いたんだ。
本当に俺はいつの間にか中野の心に救われてた。