君色キャンバス
中野も不安なんだ。
俺の過去を知っているから。
そして未来に中野は不安を抱いている。
そう思わせてる原因は俺か。
「ごめん」
俺はそう言い残し、中野に背を向けた。
そして渡り廊下を一気に駆け抜けた。
少しでも変えてていいものがあるのなら、俺は間違いなく過去を変えたい。
後ろを向きすぎて、積もった後悔の念は確実に、今に繋がっている。
だから。
俺は一番大切なものをもう一度失うのは怖くて。
気がつけば俺は美術室へと来ていた。
呼吸を整え、部室の扉をゆっくりと開くと篠原先生が俺を待ち構えていたかのように、近づいてきた。
「どうやら答えは見つかったようだね」
「……はい」
* * *
冬の寒さはどうやらまだ増しそうだった。
吐く息は白く、歩く度に寒さで体が震えた。
いつものように家に帰り、鍵穴に鍵を通そうとした瞬間、いきなり腕を掴まれた。
「響!」
「――榊原さん」