君色キャンバス
「父の死について何か、知っているんですか?!
 教えて下さいっ、お願いします!!」

 必死で頭を下げた。

 でも榊原さんからその返事は聞けず、聞こえたのは再びコーヒーを飲む音だけ。

「頭、上げろよ」

「教えてくれるまで、上げる気はありません!!」

「――俺はお前がそうやって頼み込むうちには、絶対教えない。
 だからどんなにお前が俺に言ってきたとしても、教える気はない」


 そう冷静に答えれる榊原さんは、俺よりも何倍も冷静だ。

 気がつけば、俺は冷静さを失っている。

 そう思うと現実に引き戻され、顔を見上げると、榊原さんはまた鋭い目で俺を見ている。

 榊原さんは俺の考えをまるで読んでいるかのようだった。

 その目からから離す事が出来ない。

「響も結局同じ眼をしてるな」

「血が繋がってますから」

 その言葉に榊原さんの目が一瞬で険しくなる。

 

 ああ、そっか。
 この人も探してるんだ。


 “俺の中にいる、父親”を。

 
「俺は絵を描きたいです。

 俺の手はいつだって絵を求める。
 そして俺の絵を観てくれる人がいる。

 それだけで俺はいいんです。

 いつか父親の幻影も翳むくらいの絵を絶対描きます。

 だからっ、お願いです!!
 俺の絵を信頼して下さい!!」

 必死だった。

 何もかもが、ここで決まってしまうような気がして。

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