君色キャンバス
「……変なこと言わないで下さい!!」
「おー、こんな言葉で照れるんだ」
「照れてません!!」
この人、やっぱり苦手だ。
なんていうか心が見透かされてるというか、掻き乱されるというか、とにかく中学生のときから苦手だったけど、今はそれ以上。
目を見るだけでも何かを知っているかのような目で、心が落ち着かない。
「……あのさー、お前の彼氏、今月デビューするんだって」
「――は?」
「知らないんだ」
「何を」
「俺の父の会社、結構デカいからそんな噂流れてくるんだよねー。
まぁ俺からしてみればどうでもいいけど」
「えっ……」
あの時見せた表情。
一之瀬君はきっと“決めた”んだ。
絵を描くことに。
「そうなんだ……」
私はふと美術室へと視線を向けた。
一之瀬君はいつものあの席には座っていない。
本当は知ってたよ。