君色キャンバス
一之瀬君はもう随分前から絵に向き合うことを決めたってことくらい。
それはきっとお父さんの過去を、乗り越えようとしているからだよね。
私が口を挟んでいい問題なんかじゃなく、一之瀬君自身の問題。
ここ最近、一之瀬君は学校には来ても、早退する状態が続いていた。
そして今日を含め、もう2週間くらい、学校には来てはいない。
担任の先生も何も言わない様子を考えれば、この先の展開なんて見当がつく。
きっともう、あの日々には戻れない。
それくらい馬鹿な私でも知ってる。
「本当私……馬鹿だなぁ」
知っていても、行動を起こすことのできない自分に妙な苛立ちを感じる。
ふと北村君を見れば変わらず私を見ている。
もうその視線に一言言う気も無く、美術室の方を再び見た。
特に活動もしていない美術部は、まるで文芸部のよう。
――あの場所に一之瀬君は戻ってくる?
きっとその答えは……――。