君色キャンバス
そう叫んでいる私の心は、一之瀬君には知られたくない。
今、越えようとしている壁があるのに、私のせいで一之瀬君に足踏みをしてほしくない。
一之瀬君は絵を描くことを選んだんだ。
そこに私は一緒には居られないの。
私という存在は、一之瀬君にとってもう“邪魔”なだけ。
離れる瞬間が刻々と私の心を急かす。
ああいっそ、この心を縛るこの想いから逃れられたらいいのにと願った夜は何度あっただろう。
「私は一之瀬君の夢を信じてるの。
その為に……私は、消えるの。
きっともうすぐ一之瀬君は絵の世界に飛び込む。
そうなった時、私は一之瀬君の側に居られない。
だって私はっ、一之瀬君と一緒に出来るものなんてないからっ……!」
言葉があふれ出た。
北村君にとってはどうでもいい話なのに。
何も言わないから、更に涙が止まらなくなる。
「好きなのにっ……!」
言葉に出したら何もかもが空気と一緒に溶けてゆく。