雑踏の上のタマゴ
序章
目玉焼きには醤油とマヨネーズ。黄身はプルンプルン、白身は真っ白ツヤツヤ。
軽めに塩をふり、目玉焼きは表面に汗をきたようになる。おぼつかない箸使いで 白身からゆっくりせめていき、最後にたどりついた黄色いまん丸を、箸の先っちょでプルンプルンの黄身の柔肌をチョンっと愛撫する。まってましたといわんばかりにあらわになるトロトロの黄身。そこに軽めに数滴の醤油をたらし、横にそえられたカリカリベーコンをつけて、ひとりエッグフォンデュ。ベーコン&野菜&黄身を堪能したら、お皿のそばに自ら唇を近づけ、箸でスーっと手繰り寄せて中身がこぼれないように、
大切にそして一気にスポッ!っと吸い込んで完了。

おでんの卵は最後にたべる。おでんの汁の中で出汁のしみた卵の白身をわり、黄身を引き出して出汁に溶かす。黄身の溶けた出汁に白身をくぐらせる。黄身の解けたおいしそうなだし汁が絡んだら口へ運ぶ。 そして最後の汁を器の淵に唇を添えて飲み干してしまう、アタシだけの至福のとき。

アタシと卵の秘密。




のはずだった。


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