柚時雨
「あーあ…」
容器を持つと、少しヌルっとした。
それはきっと
まだしゃぼん液が入っていたからだ。
それなのに、容器の中はすでに
雨水でいっぱいになっていて
しゃぼん液はとうに薄い。
俺は、その容器を
濡れたブランコの木板の上に
そっと置いた。
そのときだ。
「誰?」
ふいに、背後から声が聞こえた。
すごく女らしい声が。
「えっ?」
俺は、その声に背筋を張らせ
立ち上がって振り返った。
すると、目の前には
このしゃぼん玉の持ち主が居た。
深緑色の傘をさして。