柚時雨



 もっと遠くに居たはずのゆい子は

 気付くとすぐそばにいた。




 「雨の日のしゃぼん玉……
  すごく、綺麗だよ」


 クスッと笑ったゆい子は

 通学鞄だろうか。

 革製の立派な鞄の中へ手をやると

 小さな黄緑色の容器を出した。




 「声掛けてくれて、ありがとう。
  私…友達が出来たことないから」



 そう言って、ゆい子は俺に

 先程の容器を差し出した。



 「これ……」


 「良かったら…」



 その容器は

 しゃぼん玉の容器だった。


 目に映える、蛍光色に近いそれは

 ゆい子に貰ったというだけで

 ますます明るく見えた気がした。





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