柚時雨
「なあ。最近雨多くねぇか?」
「あ?」
ゆい子と知り合って
もう1ヵ月を過ぎようとしているのに
あれから再会はしていない。
何度、あの公園を見ただろう。
何度、あの笑顔を思い浮かべただろう。
何度、雨の日を願っただろう。
ゆい子を思い出す度に
俺のため息は尽きなかった。
「午後も雨らしいよん」
「……あっそ」
胸のモヤモヤにむかつきながら
学食へ行くと、また晴彦と遭遇した。
髪色がまた明るくなっている。
「……なんだよ。また例の子?」
晴彦は俺の目を覗き込むと
声を軽くひそめた。
おまけに、身を乗り出している。
「いい加減、諦めろよ」
晴彦は身を正すと
椅子に深く座り、背中を預けた。