Tower of Fantasy
1章 〜出会い〜
出発
シルバンの小さな村に、リューロはいた。
この日17歳を迎えた彼は、1人の仲間とともに旅に出る。
いずれ伝説となる彼の出発点は、ここである–––
「準備できたか?サーラ」
「ばっちりよ。リューロこそ、忘れ物ないの?」
「俺が何か忘れると……財布忘れた」
サーラは、リューロの後ろ姿を見つめながら、ため息をついた。そんなサーラを見て、たった1人見送りにきている2人の剣の師匠にしてサーラの父・アレフはクスッと笑った。
「リューロはいつも何か忘れるねぇ」
「あれ、直らないのかしら。今から不安だわ…」
「でも、剣の腕は確実にそこんじょこらのやつには負けないはずだよ」
アレフの言葉を聞いたサーラは少しうつむいた。
「私…リューロより強くなりたかった。一回でもいいから勝ちたかった…私、才能ないのかなぁ…」
アレフはうつむいた愛娘の頭をやさしくなでた。
「サーラ、才能がないなんて決めつけちゃったらいけないだろ?サーラだって弱いわけじゃない。リューロが強すぎるんだ。それに冒険の途中でリューロより強くなれるかもしれないだろ?」
「でも…リューロは強すぎないわ。だって、お父さんに勝てたことないもの」
アレフはうっと詰まった。誰にも言ったことはないが、アレフは実は昔剣のチャンピオンと言われたことがあるほどの腕だったのだ。
「サーラ、それは…」
「決めたわ!冒険して、強くなって、父さんにも勝てるようになるから!」
「そ…そう」
アレフは無理だろうと思った。
しかし、サーラのキラキラした瞳を見て、くすっと微笑み、
「期待しているよ、いつか追い越してごらん」
といった。
「お父さん、リューロが戻ってきたわ」
「ごめんサーラ!もう忘れ物ないから!」
「リューロ、剣は持っているかい?」
「それは忘れるわけない!」
一行は笑いながら村の外れまでやってきた。
「リューロ、家族は?」
「大丈夫、まだ寝ていたよ」
「本当に何も言わずに出てよかったのか?」
「うん。俺、今日で17歳になったから。母さんも父さんも17になったら冒険に出ていいって言ってたから」
「でも…」
「俺、見送りはアレフ師匠だけでいい…家族に見送られるの、結構つらいから」
「…そうか」
「お父さん…お母さまと、おばあさまは…?」
アレフは一瞬うっと詰まった。しかし、旅に出る娘を少しでも安心させるために、
「…大丈夫。ちゃんと言っておくから」
といった。それを聞いたサーラは少し安心したように、ほっと息をついた。
リューロはアレフが好きだった。
理由の一部に、サーラへの思いがあった。
アレフはサーラのことを家族のだれよりも愛している。
サーラの『おばあさま』のことをリューロは知っていたが、彼女はサーラを家に縛り付けることしか考えていなかった。そして「娘のことを考えろ」や「お前のようなろくでなしのせいで孫こんな…」などとアレフをよく侮辱していた。
そんな『おばあさま』に初めて会ったとき、リューロはとても腹が立った。「サーラのため」を語ってサーラに自分の理想を押し付け、アレフを侮辱する彼女がとても嫌いだった。
サーラのことを一番考えているのはアレフで、一番旅に出させたくないのもアレフだ。しかし、サーラを愛しているからこそ旅に送り出すのだ。
そんなアレフのことがリューロは好きだったし、尊敬していた。
だからこそ、
「リューロ?サーラのことをくれぐれも頼むよ」
と優しく言いながら、微笑んでいるのにもかかわらず鬼のような形相に見える顔でこう詰め寄られても、冷や汗を流しながら耐えることができた。
「任せとけって、師匠。なにがあってもサーラを見捨てないから!」
そう冷や汗だらだらで胸を張って言い切ったリューロにアレフは優しく微笑んだ。
しかし、リューロが一番恐ろしいのは…
「リューロ何汗かいているの?そんなに暑い?」
と、父の変貌ぶりに全く気が付いていない鈍い娘・サーラだった。
「いや…その…」
告げようとすると後ろから殺気。
「…何もない」
リューロはいつもそういわざるを得なくなるのだ。
この日17歳を迎えた彼は、1人の仲間とともに旅に出る。
いずれ伝説となる彼の出発点は、ここである–––
「準備できたか?サーラ」
「ばっちりよ。リューロこそ、忘れ物ないの?」
「俺が何か忘れると……財布忘れた」
サーラは、リューロの後ろ姿を見つめながら、ため息をついた。そんなサーラを見て、たった1人見送りにきている2人の剣の師匠にしてサーラの父・アレフはクスッと笑った。
「リューロはいつも何か忘れるねぇ」
「あれ、直らないのかしら。今から不安だわ…」
「でも、剣の腕は確実にそこんじょこらのやつには負けないはずだよ」
アレフの言葉を聞いたサーラは少しうつむいた。
「私…リューロより強くなりたかった。一回でもいいから勝ちたかった…私、才能ないのかなぁ…」
アレフはうつむいた愛娘の頭をやさしくなでた。
「サーラ、才能がないなんて決めつけちゃったらいけないだろ?サーラだって弱いわけじゃない。リューロが強すぎるんだ。それに冒険の途中でリューロより強くなれるかもしれないだろ?」
「でも…リューロは強すぎないわ。だって、お父さんに勝てたことないもの」
アレフはうっと詰まった。誰にも言ったことはないが、アレフは実は昔剣のチャンピオンと言われたことがあるほどの腕だったのだ。
「サーラ、それは…」
「決めたわ!冒険して、強くなって、父さんにも勝てるようになるから!」
「そ…そう」
アレフは無理だろうと思った。
しかし、サーラのキラキラした瞳を見て、くすっと微笑み、
「期待しているよ、いつか追い越してごらん」
といった。
「お父さん、リューロが戻ってきたわ」
「ごめんサーラ!もう忘れ物ないから!」
「リューロ、剣は持っているかい?」
「それは忘れるわけない!」
一行は笑いながら村の外れまでやってきた。
「リューロ、家族は?」
「大丈夫、まだ寝ていたよ」
「本当に何も言わずに出てよかったのか?」
「うん。俺、今日で17歳になったから。母さんも父さんも17になったら冒険に出ていいって言ってたから」
「でも…」
「俺、見送りはアレフ師匠だけでいい…家族に見送られるの、結構つらいから」
「…そうか」
「お父さん…お母さまと、おばあさまは…?」
アレフは一瞬うっと詰まった。しかし、旅に出る娘を少しでも安心させるために、
「…大丈夫。ちゃんと言っておくから」
といった。それを聞いたサーラは少し安心したように、ほっと息をついた。
リューロはアレフが好きだった。
理由の一部に、サーラへの思いがあった。
アレフはサーラのことを家族のだれよりも愛している。
サーラの『おばあさま』のことをリューロは知っていたが、彼女はサーラを家に縛り付けることしか考えていなかった。そして「娘のことを考えろ」や「お前のようなろくでなしのせいで孫こんな…」などとアレフをよく侮辱していた。
そんな『おばあさま』に初めて会ったとき、リューロはとても腹が立った。「サーラのため」を語ってサーラに自分の理想を押し付け、アレフを侮辱する彼女がとても嫌いだった。
サーラのことを一番考えているのはアレフで、一番旅に出させたくないのもアレフだ。しかし、サーラを愛しているからこそ旅に送り出すのだ。
そんなアレフのことがリューロは好きだったし、尊敬していた。
だからこそ、
「リューロ?サーラのことをくれぐれも頼むよ」
と優しく言いながら、微笑んでいるのにもかかわらず鬼のような形相に見える顔でこう詰め寄られても、冷や汗を流しながら耐えることができた。
「任せとけって、師匠。なにがあってもサーラを見捨てないから!」
そう冷や汗だらだらで胸を張って言い切ったリューロにアレフは優しく微笑んだ。
しかし、リューロが一番恐ろしいのは…
「リューロ何汗かいているの?そんなに暑い?」
と、父の変貌ぶりに全く気が付いていない鈍い娘・サーラだった。
「いや…その…」
告げようとすると後ろから殺気。
「…何もない」
リューロはいつもそういわざるを得なくなるのだ。