Tower of Fantasy
ドアをノックし、返事を待たずサーラはグローシアの部屋に入った。


「…なんです、その格好は。はしたない」


「今から旅に出るので、着替えるのが面倒でしたので」


「旅に出るのは許しません」


分かりきっていたグローシアの制止。


「嫌よ」


「…口答えするの?」


「ええ、私は私よ。おばあさまに私の人生を決める資格なんてない」


「…そう。勝手に野たれ死ぬといいわ」


今までにない言葉に、サーラは驚いた。


「あなたの母の妹…あなたはあれにそっくりだわ。わたくしの言うことも聞かないで」


自分の母に妹がいたことを知らなかったサーラは、さらに驚いた。


「まぁ、最期にわたくしの言うことを聞いたからあなたよりはいいわ」


「…何を仰りたいの?」


「養子を迎えることにしたわ」


サーラは再び驚いた。


「あなたの母の妹の息子。わたくしの…セレスディア家の血を継いだ男」


「私のお母様の妹は…」


「病で死んだわ。だから引き取ったのよ」


「…それは」


「入りなさい、フィリウス」


後ろのドアが開き、サーラと同じ金髪碧眼の同い年くらいの男の子が入ってきた。


「フィリウス=ウェルヒート…いえ、養子入ったから、フィリウス=グローシア=セレスディアね」


「ウェルヒート…?」


その苗字は…


「エルフとのハーフよ」


…やっぱり。

とても身近な『ウェルヒート』がいるもの…。


「あなたの義兄よ。この屋敷を案内してあげなさい。わたくしはもう休むわ」


サーラとフィリウスは追い出された。
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