したたかな彼女
オムライス
十三日の朝。
工場で夜勤明けのよしきは、お昼にオムライスを作ってくれるという。
志保とまりえの二人は一つの机の上に二つの鏡を置き、一緒に化粧をした。
お互いにいつもより念入りで、気合が入っている。
「あ~! 今日にかぎって一段とブス!」
志保は鏡に向かって怒る。
「あー、わかる」。 とまりえも言う。
失敗したくない日にかぎって、うまくいかない。
「でも志保ちゃんかわいいのに」
「まりえちゃんに言われても説得力ない」
「なんでよ~! あたし志保ちゃんの顔好きなのに~! 鼻高いしぃ、二重も大きいしさぁ・・・」
「でもまりえちゃんはくっきりした目でいいじゃない。 お人形みたいでかわいいし」
「いーや」
「わがまま」
「そっちこそわがまま!」
まりえは手をのばして志保の肩をたたく。
「あはははは!」
二人は笑いながら、また化粧をする。