したたかな彼女
次の日、二人は昼食を済ませると、一時前に家を出た。
街に繰り出し、真っ先に向かったのは芳樹の働くカフェ。
志保は朝目覚めてからバスの中、そして歩いている最中もあまり芳樹の話はしなかった。
「ねぇ、芳樹さんを遊びに誘わないの?」
そう、まりえが芳樹のことを尋ねても、志保はうまく流した。
「聞けないよ~! そういえばさ、後でまりえちゃんがいってた 雑貨屋にいきたい」
「おお、行こう、行こう★ そこはねぇ~・・・」
意味なんてないけど、なんとなく志保は変えてしまっていた。
でも本当はまりえの話よりも、自分が芳樹の話をしたくてたまらない。
「あ、ここだよ!」
志保が喜んで指差す先には、水色に塗られた木箱のようなお店があった。
「・・・へぇ~、かわいいじゃん」
窓ガラスには白いペンで文字がかかれている。 誰の字だろうか・・・。 それに読めないのできっと英語ではない。
「でしょ~! まりえちゃんなら気に入るって言ったでしょ?」
「うん! いいね!」
志保は何度か来たことがあるけど、いつも一人だったし、こうやって友達と芳樹に会いに来ることが恥ずかしくて妙に緊張した。