したたかな彼女
メッセージ
あさ芳樹が目を覚まし、カーテンを開けたら窓から引っ越しのトラックが来ているのが見えた。
でも彼は気にせずに仕事へ行く用意をして外へ出る。 すると荷物が運ばれていたのは志保とまりえの部屋からだった。
―あれ?―
と芳樹は首をかしげる。
すると志保が階段を上ってきた。
「あ、おはよう」
笑顔の志保に対し、芳樹はきょとんとした顔で言う。
「引っ越すの?」
「うん」
「なんで教えてくれなかったのさ」
「急だったの。 お婆さんが倒れちゃって」
「そうだったんだ・・・」
「でもまりえちゃんはまだいるよ」
「そう」
芳樹の淋しそうな表情に、志保の胸は締め付けられた。
必死にはにかんだ笑顔で好きな人をみている自分がバカに思う。
「また遊びにくるだろ?」
「うん」
「・・・」
一瞬、芳樹の言葉が詰まる。 彼がなにかを言いたげなのがわかった。
でも何も言わず、それが間になった。
そして彼なりの精一杯の言葉を口にした。
「淋しくなるね」