したたかな彼女
志保はうれしくも哀しくもなった。
まずうれしかったのは、芳樹とまりえが離れた事。
そして哀しかったのが、これで本当に思い出の場所がなくなってしまうこと。
「志保ちゃん、最後に芳樹さんの家のポストに手紙いれたんだって?」
志保の目が泳いだ。 そう、志保はまりえだけではなく、芳樹にも“ありがとう”だけの手紙を置いていったんだ。 心臓をバクバクさせながら志保は笑う。
「うん、聞いた?」
「うん、“また機会があれば会おう”ってさ」
「機会があればって・・・」
ヒドイな~と志保は笑った。
そしてまりえが言う。
「素直じゃないよね」
「そうだね。 わたしもだけど」
でも志保は心の中でつっこむ。
―1番素直じゃないのはまりえちゃんでしょ?―
まりえは今更になって芳樹の気持ちを志保に伝えた。
つながりのある内にそんなこと伝えちゃったら、確実に会うことになる。
―まりえちゃんはあいかわらずね―
そう志保は思った。