カワイイ子猫のつくり方
すると、その女性は少し困ったように微笑むと、

『この病院は色々な意味で私にとって馴染み深い所なの』

そう言って、そこから見える景色を見渡すように視線を流した。

遠くを見つめるその横顔は決して暗いものではなかったが、実琴は何だか複雑な気持ちになってしまった。

(『色々な意味で』って何だか意味深な言い回し…だよね。もしかしてこの病院で亡くなったとか、そういう意味も含まれていたりするのかな?)

そして霊としてここに存在しているということは、何かこの世に心残りでもあったりするのだろうか?


勝手な想像をして重たい気持ちになってしまった実琴に反するように、その目の前の女性は柔らかな微笑みを浮かべて振り返った。

『そんなことより、あなたのことよ。ミコちゃん。私、あなたのこと探してたの』

実琴の視線に合わせるように傍へとしゃがみ込む。

その幽霊にしては不釣り合いな程にキラキラした悪戯っぽい瞳で見つめられて実琴は焦った。


(そうだった。この人何で私の名前…)


『あの、何で…?』

『私、ずっとミコちゃんのこと見てたのよ』

『ずっと…?』

『そう。朝霧の家から…ね』


『え…?』


思わぬ人物からの思わぬ言葉に。

実琴は目を丸くして固まってしまった。


『朝霧、の…?』


その実琴の驚きように女性はクスクス笑うと、自己紹介をするように言った。

『私は、この病院の院長である朝霧京介の守護霊なのっ』
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