カワイイ子猫のつくり方
(何より、まずはミコを探さなくてはな…)

病室まで来ていないとなると、何処かで迷っているか、潜んでいるか…だが。


朝霧は、周囲を確認しながらゆっくりと歩いて行った。

だが、廊下には隠れられそうなポイントさえ見当たらない。

(階段はともかく、廊下は見通しが良過ぎて無理そうだな)

幾ら小さいとはいえ、動物が歩いていたら流石に目立つ。

(鈴も付いているんだ。普通に考えて誰かしら気付くよな)

気付かないなら気付かないで、この病院の管理体制は問題ということになる。


結局、先程昇って来た階段まで戻って来てしまった朝霧は、邪魔にならない場所で一旦立ち止まると、腕を組みながら周囲を見渡し、考えた。

(上に行くか。それとも下へ戻ってみるか…)

本来ならば、子猫一匹の行動を読むことなど困難で、それこそ片っ端から探すしかないだろうとは思う。

だが、どうしてもミコは何か目的を持って行動しているように感じるのだ。

それこそ、普通の猫にはない不思議な力を携えているような?

(ファンタジーの世界さながら…だな)

朝霧は自分の発想に、心の中で自嘲気味に笑った。

が、その時。不意にある場所を思い出した。


(そう言えば…)


小さな頃なので記憶が曖昧だったが、昔祖母が此処に入院していた時に一度だけ行ったことがある屋上がこの階にあったことを思い出した。

ミコとは関係ないものの、気になった朝霧は記憶を辿ってその場所を探し始めた。
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