カワイイ子猫のつくり方
(確か、こっちに…)


通常患者が通らない一歩奥に入った廊下を行くと、その扉はあった。

扉は僅かに開いていて、外の空気が緩やかに流れてくる。

朝霧は懐かしさのままにその扉の前に立つと、外へと足を踏み出した。

その瞬間。

思ってもみなかったものが視界へと飛び込んで来た。



「ミコッ?」



「にゃ?!」

ミコは、ビクッ…と驚いた様子で顔だけこちらを振り返ると、固まっている。


「お…前、何でこんな所に…」


こんな偶然、あるのだろうか。

たまたま思い出したこの場所に、まさかいるなんて。


「にぃ…」

ミコは悪戯が見つかってしまった子どものように小さく首をすくめ、こちらを伺っている。

朝霧は暫く扉の前に立ち尽くしたまま、そんなミコの様子を眺めていたが、一つ小さく息を吐くと「まったく…」と呟いた。

「お前…。どれだけ心配したと思ってるんだ?」

朝霧はゆっくりとミコに近付いて行くと、そっと傍へとしゃがみ込んだ。

「みー…」

上目遣いで見上げてくるその顔は、まるでしょんぼりと反省の色が見えていて。

元々子猫相手に何を攻めるつもりも毛頭なかったが、その顔を見ていたら怒る気も説教する気も失せてしまった。

朝霧は僅かに表情を緩めると、ミコの目前にそっと手を伸ばした。

すると、その手に応えるようにミコも朝霧の手のひらに自分の右前足をそっと乗せてくるのだった。
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