カワイイ子猫のつくり方
何だか切なくなって、すぐ傍まで来た朝霧を見上げていると。

不意に「しょうがないな」という表情を見せて、朝霧はその大きな手を差し出してきた。

それが、まるで『一緒に行くぞ』と言われているようで、嬉しくて。

実琴はその手を取るように前足をそっと添えた。



朝霧に抱え上げられ、温かい腕の中に納まっていると、安心感からドッ…と力が抜けていくようだった。

今まで人に見つからないようにと、それなりに緊張していたのかも知れない。

(ううぅ…。眠気が襲ってきそう…)


『他人の身体に入るのってすごく体力がいるものなのよ』


先程、守護霊さんが言っていた言葉。

それに今日は朝も早かったし、体力的に限界がきているのかも知れなかった。

(でも、どうしよう…。このまま朝霧といたら、また自分の身体に会うことも出来ず、朝霧の家に戻ることになっちゃうかも…)

折角、ここまで来たのだ。せめてどんな状態でいるのか見てみたい。

それに、眠ったままでいる子猫の意識にも呼び掛けてみたい。

(…そうだよ。今は眠ってなんかいられないよっ)

実琴は朦朧としてくる頭に気合を入れるように、ぷるぷると振った。

すると…。


「おっと!」


突然の動きに子猫を取り落としそうになり、朝霧は慌てて片手と身体で支え直した。

朝霧は先程から、実琴を抱えたままスマホを操作している。

とりあえず無事に確保出来たことを父に一報入れていたのだ。
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