カワイイ子猫のつくり方
すると、送信し終えたのか朝霧はスマホをジーンズのポケットへと差し込むと、実琴を両手で自分の目線の高さまで抱え上げ、ジッとその目を見つめた。

「それで…?結局、お前は辻原に会えたのか?」

『へっ!?』


びっくりした。

内心で心臓が飛び出るほど驚いていた。


(何で…っ。朝霧っ??)


何故ここで『私』が出てくるんだろう?

どうして、ミコが『私』に会いに来たと分かったんだろう?


実琴は半ばパニック状態であった。

子猫を傍から見ても、それは分からなかったが。

だが朝霧は、そんな実琴の様子をじっ…と見つめていた。

まるで少しの様子の変化も見逃さない、というように。

その真っ直ぐ見つめてくる切れ長の瞳が、実琴の心の核心を突いて来るようだった。


「何でお前が辻原を気にしているのか理由は分からないが…。お前は初めて会った時からそうだった。ここに来たのは偶然なんかじゃないんだろう?辻原との間に何か、あるんじゃないのか?」

「みー…」



朝霧は子猫に問い掛けながらも何処か冷静に自分を分析していた。

(…俺は、猫相手に何を言ってるんだろうな?)

こうして問い詰めたところで、どのみち理由を聞きだすことも出来ないというのに。

だがミコは、こちらの問い掛けに応えるように「みー…」とだけ鳴いた。

(せめて、コイツの言葉が解ればな…)

それこそ、非現実的以外の何ものでもないけれど。
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