カワイイ子猫のつくり方

鳴き声が聞こえた。


…子猫の、鳴き声が。



外見は自分。

普段から見慣れた『実琴』、そのままの姿。

寝起きで髪も乱れていたし、ちょっとやつれた感じではあったけれど。


だけど、何より怯え方が半端ではなかった。

慌てたように病室から目の前に飛び出して来た『実琴』は、酷く怯えた様子で手を差し伸べる人たちの全てを拒否している感じだった。

人の手から逃れるように、必死に周囲を搔き分けていく。

でも、上手く歩くことが出来ないのか、足元は覚束ない様子で壁にぶつかってはよろめき、最終的には床に膝をついてしまった。

途端に看護師たちに囲まれ、拘束され。怯えはパニックへと変わっていく。



それは、まさしく『あの子猫』だった。



守護霊さんが言っていた通り実琴の身体の中に助けたあの小さな猫ちゃんがいるのが私にも分かった。

見えている…というのとは違う。それは、感覚的なものだった。


そして、声が聞こえる。



…タスケテ

コワイヨ…


タスケテーーー…


それは、あの木の上で助けを求めて鳴いていた猫ちゃんと同じ。

切ない、悲痛な叫びだった。


でも、そうだよね。気が付いたらこんな場所にいて知らない人間たちに囲まれて。パニクらない方がおかしいよね。

きっと、人になど慣れていない。

まだ生まれて間もない、小さな子猫なのだから…。

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