カワイイ子猫のつくり方
助けてあげたかった。
少しでも、不安を取り除いてあげたかった。
『大丈夫だよっ!猫ちゃんっ!大丈夫だから…っ…』
誰に言うでもなく、ただひたすらに助けを求めているその声に切なくなって、実琴は飛び出そうとした。
だけど、それは叶わなかった。
朝霧の手に阻まれたのだ。
「馬鹿、出るなッ。今は駄目だっ」
小さな声だが言い聞かせるように朝霧は言うと、ポケットから出ようとする自分を必死に抑え込んだ。
表面上は冷静さを保っているようだったが、朝霧も目の前の光景に驚きを隠せない様子だった。
『離してっ朝霧っ!!猫ちゃん不安になってるっ!私が行ってあげないと…っ。私と猫ちゃんはっ…っ…!!』
実琴が声を上げても、朝霧は聞き入れてくれない。
猫の言葉が解らない以上仕方のないことなのだが、その時はそれどころではなく…。
『お願いッ!朝霧っ!!』
出して欲しいと必死に暴れた。
だが、この場は一旦離れた方が良いと朝霧は判断したのか、実琴をポケットに押し込めたまま、その騒ぎから遠ざかるようにスタスタと別方向へ足を進めていく。
『タスケテ…』
遠のいていく子猫の声を耳にしながら、実琴は何もしてあげられない己の不甲斐なさに泣き崩れた。
『お願い、だよ…あさぎり…っ…』
子猫の姿である今の自分に、涙は零れなかったけれど。