カワイイ子猫のつくり方
病院の外へと出た所で、やっとポケットの中から出して貰うことが出来た実琴だったが、その時には既に体力も気力も限界に達していた。

身体が重くて、上手く動くことすら出来ない。

元々疲労が溜まっていたところに、狭いポケットの中で暴れたり泣いたりした為、余計に体力を削られてしまったのかも知れなかった。

『せっかく…会えたのに…。私、何もしてあげられなかった…』

ただただ、無力な自分を呪う。

傍へ行けば何とかなる、なんて。楽天的な考えも良い所だ。

(本当に…これからどうしたらいいか、全然分からないよ…)


何か次の策を考えなくては、…と思うのに。

頭もろくに働かない。


手のひらに乗せられたままその身を預け、力なく朝霧を見上げていると。

朝霧は思いのほか真面目な顔で見下ろして来た。


「また、必ず連れてきてやるから。だから、そんな顔をするな」


まるで誓うように小さく呟くと。

驚きの眼差しで見上げている実琴の頭をそっと優しく撫でた。



(あさぎり…)


何で、こんなにも優しいのだろう。

(ホントに朝霧は…。猫には無条件に優しいんだね…)


そんな顔は反則だと思う。

こんな温かい手も反則だ…。


何の事情も知る訳でもないのに、何故だか全てを引っくるめて『大丈夫』だと言ってくれているようで。

その手の温かさに安心して、唐突に襲ってきた睡魔の波に身を委ねた。

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