カワイイ子猫のつくり方
病院にいることは父親から連絡を受けていたとしても、広い院内の何処にいるかなんて分からないのに、それでも朝霧は探し当ててくれた。

それに『実琴』の傍へ連れて行こうとしてくれた。


――子猫が人に会う為に病院へ行く。


全く有り得ない話ではないのかも知れないけれど、普通に考えてなかなか信じ難いことだとは思う。

それを朝霧は普通に受け入れてくれていた。

病室へ向かう時も…。普通なら、院内で動物などを放したら暴れて騒ぎになるかも知れないし、衛生面からしても色々と問題な筈だ。

なのに、朝霧は…。


(信じて…くれてるんだよね?ミコのこと…)


それは、今までのミコ(自分)の行動一つ一つを朝霧がよく見てくれていた証拠なのだと思う。

それが何だか嬉しくて。

同時に、偽っている自分の立場が悲しく感じた。


(ごめんね、朝霧…。私、朝霧に本当のこと伝えたいよ…)


呆れられてもいいから。

嫌われてもいいから…。


それは『実琴』の中で戸惑っている子猫の為でもあるし、協力してくれている朝霧への自分なりのケジメでもある。


早く子猫の不安を取り除いてあげたかった。

その為には、また病院へ向かわなければいけない。

だが、それには協力者が必要不可欠なのだ。

それを今日のことで痛い程に知ったから…。


自分の体裁なんて、この際どうでもいい。

たとえ、それで朝霧に軽蔑されてしまうとしても――…。

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