カワイイ子猫のつくり方
「ごめん、なさい…」

辻原は指先で涙を拭うと、何故だか謝罪の言葉を口にした。

理由も分からず謝られるのは、あまり気分が良いものでは無い。

「何のことだ?」

怪訝な表情を隠すことなく聞き返すと、辻原は再び口を開いた。

「ごめんね…。私、朝霧に謝らないといけないことがある…」

小さな声だが、ハッキリと辻原はそう言った。

「…謝らないといけないこと?」


泣く程のことか?

そんなに不味いことを何かやらかしたのだろうか。


色々考えながらも静かに応えを待っていると。

再び彼女は口を開いた。

だが…。



カタ、…カタ、…カタ…



今度は聞こえてくる筈の声が聞こえて来ない。

代わりに何か、小さな音がする。

(これは…。何の音だ…?)

聞き覚えのある音のような…。


何かをぽつぽつと話しているらしい辻原を前に、どうしても意識はその『音』の方へと向いてしまう。


(もしかして、これは…パソコンのキーを打つ音か…?)


その答えが確信へと変わった時。

急激に意識が浮上していった。




「………」

朝霧は、うっすらと目を開けた。


(…寝てたのか…)

机に頬杖をついたまま、どうやら眠ってしまっていたらしい。

未だ意識がぼんやりとしている中、不意に夢の続きのように小さな音がして、朝霧は何気なく自分の手元へと視線を落とした所で、思わず目を見張った。
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