カワイイ子猫のつくり方
そこには子猫がちょこん…と座っていた。

キーボード上に。こちらに背を向けて。

何やら懸命に身を乗り出し、小さな前足を伸ばしてはキーを押している。

(…ミコ?)

「悪戯したら駄目だろう?」と、その身を抱え上げようと思いながらも、目線は何気なく移した画面上へと釘付けになっていた。

開いたままになっていた検索ページの画面上のバー部分に、長い文字列が表示されている。

その打ち込まれた文字の数だけ、ミコが悪戯したということなのだろうが…。



(――何だ…?これは――…?)



朝霧は我が目を疑った。

そこには、ただの文字列などではない、意味を成す言葉が並べられていたのだ。

そう、しっかりと『言葉』なのである。

ただ、いたずらに適当に押された文字などではない『文章』がそこには打ち込まれていた。


(こんな偶然、有り得ない…)


子猫の悪戯でたまたま文章が出来上がることなど、確率的に無いに等しい。

それでなくとも、このパソコンの入力方法はローマ字入力に設定している。普通に日本語の文章を打つにも、それを理解していないと難しい筈なのだ。


朝霧は身動きすることも忘れて固まっていた。

その間にも、ミコが再びキーに手を伸ばそうとしている。


「…ミコ…?」


思いのほか動揺が声に出てしまったのか、僅かに掠れた声が出た。

だが、目の前の子猫には届いたようだ。

ビクリ…と動きを止めると、ミコはゆっくりとこちらを振り返った。
< 151 / 220 >

この作品をシェア

pagetop