カワイイ子猫のつくり方
思わずブルブルと毛を逆立てていると。

「お前は大丈夫だったのか?」

朝霧が聞いて来た。


『…え?』


こちらを気遣うようなその言葉に、思わず目を丸くしていると。

「あの人には既に常識が通用しないからな。変にいじられたりされなかったのなら別に良い」

溜息交じりにそう言われて、実琴は慌てて頷いて見せた。

『大丈夫だよ。それに、久し振りに人と話せて嬉しかったんだ。猫になってから誰とも話せなかったし…。守護霊さんには、すごく気持ち救われたんだよ』

ゆっくりと前足で文字を指し示し、言葉を伝えていく。

朝霧がちゃんと目で追ってくれているのを確認して、実琴は再び続けた。

『私…。朝霧にもずっと話をしたかった。でも、伝える術[すべ]がなくて。結果的に騙すような形になっちゃって…本当にごめんなさい』

やっと、ずっと伝えたかった言葉を伝えることが出来た。


『ずっと…謝りたかったんだ…』


そっと見上げると、少し驚いたような顔をした朝霧と目が合った。

『ごめんね』言葉だけでそう言うと、実琴はペコリと頭を下げる。

(実際は「にゃー」としか言えてなかったけれど。)



朝霧は暫く、そんな実琴を無言で見下ろしていたが、小さく息を吐くと「別に…」と口を開いた。

「お前が謝る必要はないだろう。俺が勝手に連れ帰っただけだしな」

『…あさぎり…』
< 161 / 220 >

この作品をシェア

pagetop