カワイイ子猫のつくり方
(…えっ…?)


顔を上げると。

そこには、ふわり…と微笑む優しい顔をした朝霧がいて、実琴は思わず息をのんだ。

だが、次の瞬間。

「言葉が話せなくても何を考えてるのか、だいたい分かる。そういう分かりやすい動物的なリアクションが取れる所とか、ある意味才能だよな」

今度は、その微笑みのままに皮肉を込められて実琴はがっくりと肩を落とした。

『ううぅ…。どうせ単純ですよっ。本能のままに行動してますよーだっ!』

そう咄嗟に声を上げるも「今のは何を言ってるのか分からなかった」と、笑われてしまう始末。

(くーそぉーっ…。一瞬でもトキメいて損したっ!)

これでは学校でのいつもの憎まれ口と大して変わらない。


(でも…何でだろ?…何か、こんなやり取りでさえ楽しい…)


朝霧がいつもより楽しそうに笑っているから――…?



「まあ、責任というのは冗談だ。別に何かを隠しているつもりはないしな。お前に覗かれて困るような汚点もないつもりだ」

先程の笑顔を収めて、しれっとそんなことを言う朝霧に。

(あー…ですよねー…)

実琴はただ聞き流すように、うんうんと頷いていた。

「でも、敢えて本音を言うなら…」

『…?』


何かを考えるように遠くを見ながら一旦言葉を区切った朝霧が、不意に真面目な顔でこちらを見下ろしてくるのを、実琴はきょとん…と見上げていた。


「…このまま俺の猫に、ならないか?」

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