カワイイ子猫のつくり方
『元に戻る方法を考える』


…そうは言ってみたものの、どう考えても、どう調べようとも上手い方法など見つかる筈もなく。

(当然だ。人と猫の中身が入れ替わるだとか、そんな事例今まで見たことも聞いたこともない)

それでも時間[とき]は、その間にも刻々と過ぎてゆく。

『とりあえず傍へ行かないことには猫ちゃんを助けることなんか出来ない』という辻原の熱望に結局折れる形となり、現在に至るという訳だ。


(…全く、コイツのお人好しには頭が下がるな)

胸ポケットに収まっている子猫にチラリと視線をやる。

辻原の場合、『自分が元に戻る』為ではなく、あくまでも『子猫を助けたい』が先行しているのだ。

結局は同じところに繋がっているのだろうが、根本的な考え方がそもそも違う。

(こんな姿になって、自身の不便も不安も色々あるだろうが、そういう逆境には全然屈しない感じなんだな)

ある意味、逞しいというか。

本当は、ただの考えなしなのかも知れないが。

それでも…。

(コイツのそういう所…嫌いじゃないけどな)


自分にはない熱いものを持っている、どこか眩しい存在。

放っておけないと思うのは、コイツがあまりに一生懸命だからか。

それとも…?

(既に俺もコイツに毒されてしまっているのかもな)


それでも、こうして頼られるのは悪くない。

他ならぬコイツの頼みなら。


柄じゃないとは思いながらも、今更ながらに子猫を拾ったのが自分で良かったと思う朝霧がいるのだった。
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