カワイイ子猫のつくり方
(もしも、そんな魔法のような力があるのなら…)


実琴は目の前に横たわる自身の身体へと、おそるおそる手を伸ばした。

薄い布団越し、そっとその右腕へと前足を添える。


(どうか、猫ちゃんを助けてあげて欲しい…)


月の光でも何でも構わない。

何にだってすがりたい位だった。


『どうしたら、戻れるのかな…?』


誰に言うでもなく呟いた。

そして念じるように。

心の声が届くようにと頭の中で子猫に呼び掛ける。


猫ちゃん…。



すると。

添えていた右腕が僅かにピクリ…と動いた。


(え…?)


「あっ!目を覚ましたみたいよ」

小声ではあるが、守護霊さんが声を上げた。

その時だった。


「…っ!」

実琴の姿をした子猫は、瞬時にガバッと布団を捲って飛び起きると、こちらに向かって対峙するようにベッド上で距離を取った。

その瞳には、暗闇の中でも判る程に恐怖と警戒の色が見て取れる。

『猫ちゃんっ』

実琴は咄嗟に宥めようと子猫の傍へと一歩近付いた。

だが…。


「~~~~~~っ!」


突如子猫は声にならない声を上げ、座り込んだまま頭を抱えるように暴れだした。

『きゃっ!』

その拍子に小さな実琴は弾かれると、ベッド下へと転げ落ちる。

「辻原っ!」


普通の猫ならば、咄嗟の出来事でも持ち前の瞬発力で反応して動けるものなのかも知れない。

だが、受け身を取れなかった実琴は、思いきり床へと身体を打ち付けてしまった。
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